~在るべき未来の具体像から、成すべき今を創る~
一般社団法人駒ヶ根青年会議所
第60代理事長 伊藤 航
【基本方針】
~はじめに~
駒ヶ根青年会議所は、間もなく60周年を迎えようとしている。これまでの長い歴史の中で、インフラや経済、国際交流、青少年育成など、枚挙に暇がないほどの功績が先人たちの手で積み上げられ、今日へと続いている。当然ながら、この功績の背後には想像を絶するような障壁が幾重にも立ちはだかり、そして打ち破ってこられたはずだ。
「一年しか同じ活動はできないのだし、自分たちに学びがあればひとまず良し」
一種の諦めともとれるこのような思いを、もしも先人たちが内に秘めていたとしたらどうだろうか。これまでの伊南地域の発展に大きく貢献することなど到底できず、今日まで駒ヶ根青年会議所が存続しているわけもない。
時代が移ろい、組織の規模がかつてとは異なる中であっても、伊南地域の未来をより良くするためには、私たちは先述のような思いに決して揺らぐことなく、心の底から本気になって運動を展開し続けなければならない。
少子高齢化社会、若者の流出、国際競争力の低下など、私たちの前にはあまりにも高い障壁が数多く立ちはだかっている。それでもただ愚直に前だけを見て、明るい豊かな伊南地域を具体的に描き、実現へと向かおう。
私たちが見据えるべきは、地域の「今」ではない。私たちの起こす運動が1年後、3年後、10年後、地域にどう作用していくべきかを真剣に考えよう。
未来が大きく変わる起点は、誰も想像し得なかったごく小さな何かかもしれない。未来への情熱を胸に奮い立ち、様々な人々と情熱を分かち合い、ともに歩き出していこう。
【事業方針】
~運動の軌跡を学び、未来に活かす~
駒ヶ根青年会議所創立50周年にて策定された「未来ビジョン2016」。
『一人ひとりの「可能性」と地域への「想い」が満ち溢れる、輝くまち』を目指すこの長期ビジョンが約10年の間、駒ヶ根青年会議所の歩む道を照らし、様々な運動が展開され続けてきた。
創立60周年を目前に控える今、私たちは改めて、先達がふるさとへの想いを胸に苦労に苦労を重ね深く刻んできた様々な運動の足跡と成果を辿る必要がある。
社会開発、人材開発をはじめとしてこれまで様々に展開されてきた運動について、どのように課題を分析し、目的を設定し、事業を構築してきたのか。その思考過程や功績、反省までをも継承し、これからの私たちの運動の基盤としよう。
加速度的に変化を続ける現在の社会において、駒ヶ根青年会議所はどのような組織であるべきで、どのような視点に立ち運動を起こしていくべきなのか。具体論の中で徹底的に追及し、会員全員が確かな共通理解をもって、在るべき未来へと向かう一歩を踏み出そう。
~多様な連携から生まれる伊南ブランド~
インバウンドや国内旅行に対する市町村を超えた地域連携の強化は、特に経済力の観点から地域の持続可能性に直結する要素として重要性が高まり続けている。各市町村の魅力や資源を掘り起こして掛け合わせ、高付加価値を生み出し、国内外様々な人々のニーズを呼び起こすことができれば、それは地域全体の大きな発展へとつながっていく。
私たちが住まう伊南地域は、自然との共生が生む癒しや人の温かさなど様々な魅力を求める人々が繰り返し帰りたくなる場所、暮らしたくなる場所、つまり多くの人々にとっての「第2のふるさと」となる可能性を多分に秘めている。
単なる旅行ではなく、地域とのつながり、人とのつながりが生まれる旅とは何なのか。
今こそ青年経済人たる私たちが、伊南地域の観光、経済振興をつなぐ新たなネットワークの起点となり、「まち」と「ひと」を訪ねる人々に対して真に提供すべき伊南地域の価値とは何なのかを、多くの地域関係者とともに突き止め、行動を起こしていこう。
~グローバルな社会目線が育まれる教育~
戦争や食料危機、政治的分断など、国際社会は今なお混沌を極めている。そして歴史的な円安により、多くの資源を海外に頼る日本は輸入産業を中心に苦境に陥っている。
この状況下で、私たち日本人は日頃、国際問題に対してどこまでの当事者意識をもてているだろうか。人口減少は加速し、より強固な国際連携の必要性が叫ばれる中、その時代を生き抜かねばならない次世代に、果たして充分な国際教育ができているのだろうか。
他国との文化交流や相互理解はもちろんだが、国際化が進む社会において、地球的視野に立ち他国と自国の社会課題の結びつきを洞察し、課題に対し主体的に行動できる人材の育成が必要である。
幸いなことに駒ヶ根市には国内に2つのみの青年海外協力隊訓練所が所在し、市民や団体との連携により様々な異文化交流が長年行われるなど、国際色豊かな土壌がすでにある。この恵まれた環境を活かし、国際社会に深い関心をもてる教育の在り方を構築し、これからの時代に真に必要となる国際教育の先進地域を目指そう。
~「やってみたい」から始まる会員拡大~
内外からの共感なき組織に、まちづくりなどできようはずもない。
ここ数年の間、駒ヶ根青年会議所で進められてきた共感型会員拡大は、高い熱量をもった青年を会員として迎え入れることに成功している。入会候補者に対してまずは事業等への参画を促し、「やってみたい」という前向きな思いのもと門戸を叩いてもらえることは、ともに運動を起こす仲間を迎える入り口として新入会員、既存会員双方にとって好ましいものであると考える。
駒ヶ根青年会議所が今後も地域に必要とされる組織力を保つためには、人口減少を言い訳にせず、一人でも多くの仲間を獲得し続けなければならない。
多様な人々と連帯し事業をともに創り上げ、地域社会により良い変化をもたらす体験と、自己成長の実感を共有しよう。
同時に、私たちは全ての運動が独善的でなく広く共感を生むものであるかどうかを常に自問自答しつつ、事業展開や発信の方法を模索する必要があることも忘れてはならない
~おわりに~
私たち会員はまちを愛する伊南地域住民として、地域経済を支える青年経済人として、次世代を担う子供たちの先輩として今、青年会議所の何から最も深く学ぶべきなのか。
挑戦と失敗が許されるのが青年会議所である。無論これは、失敗するつもりで事に臨んで良いという意味ではない。望む結果に到達できない可能性から逃げずに立ち向かい、大いなるインパクトを目指して挑戦を繰り返し、その軌跡こそを学びとしよう。
目指すものを大きく掲げよう。そして多くの人々と協働しよう。目指すものが大きければ大きいほど、そして肩を組んでともに苦悩できる仲間が多ければ多いほど、おのずと着地点は高くなる。
何事も達成するまでは不可能に見えるものだ。「たかだか数十人の集まりに何ができる」と心の内でささやく自分に、小さく無難にまとまろうとする自分に、抵抗し続けよう。
国全体が将来不安と閉塞感に満ちる今、まちの未来をより良く変えられると信じ続ける会員全員の奮起に、心から期待する。